退職代行は依頼者に代わって「退職します!」と伝えてくれるサービスです。
退職を切り出しにくい人や会社に行くのが辛いという人にとっては、退職の精神的負担を取ってくれる大変心強い味方でしょう。
しかし自力で退職が難しい人の味方である退職代行にもデメリットがあります。今回は退職代行のデメリットとデメリットの回避法を解説します。
最後まで読めば、デメリットを避けたおいしいとこどりの退職が叶うはずです。
- 退職代行には5つのデメリットがある
- デメリットがあったとしても、利用したメリットの方が圧倒的に大きい!
- 「対応範囲」「料金」「評判」をして退職代行を選べば、デメリットは避けられる
- 弁護士か交渉できる労働組合の退職代行を選んでおけば間違いない!
目次
【要チェック】退職代行を利用する5つのデメリット
退職代行というと「退職の意思を自分の代わりに伝えてもらえる」というメリットに目がいきがちです。しかしデメリットもあります。
デメリットを理解したうえで、利用するかどうか判断するようにしましょう。
デメリット1:退職代行の利用は有料
退職代行は業務委託サービスの一つなので、利用するのには料金がかかります。通常退職にお金はかからないので、有料サービスの退職はデメリットといえます。
退職代行のおおよその料金相場は2~3万円です。
運営元 | 料金相場 |
---|---|
民間企業 | 1~3万円 |
労働組合 | 2.5~3万円 |
弁護士 | 3~7万円 |
上記からどんなに安くても1万円はかかることがわかるでしょう。ただし退職代行の料金を高いと感じるかどうかは、個人の価値観次第です。
「退職代行のお金はもったいない」と思うのも一つの価値観です。そのかわり無理して働き続けて心身を壊してから退職すると、治療に多くのお金と時間がかかります。さらに重症だと、社会復帰が難しくなるかもしれません。
有料なのは退職代行のデメリットです。しかし数万円を惜しんで人生をダメにするくらいなら、退職代行の利用をオススメします。
デメリット2:有給消化や未払残業代の交渉ができない業者もある
退職代行業者は運営元によって代行できる業務範囲がさまざまで、選ぶ業者によっては有給消化や未払い残業代の交渉ができません。
運営元 | 民間企業 | 労働組合 | 弁護士 |
---|---|---|---|
退職の意思を伝える | 〇 | 〇 | 〇 |
有給消化や未払残業代の支払いなど本人の要望を伝える | 〇 | 〇 | 〇 |
退職日の調整 | × | △ | 〇 |
有給消化や未払残業代の交渉 | × | △ | 〇 |
未払残業代・給与の請求 | × | × | 〇 |
会社との法的トラブルの対応 | × | × | 〇 |
会社との話し合いが必要な「退職日の調整」や「有給消化や未払残業代の交渉」に対応できるのは、一部の労働組合と弁護士の退職代行です。
大原則として弁護士以外が報酬をもらうのが目的で、交渉などの法律業務をするのは法律違反です。
ただし労働組合には「団体交渉権」があります。各都道府県の労働委員会に認定された労働組合が運営または提携している退職代行ならば、会社と交渉可能です。
間違った退職代行の選び方をすると、希望通りの退職が叶わない点は退職代行のデメリットといえます。
デメリット3:ボーナスや退職金が不支給になるケースがある
ボーナスや退職金と給料には明確な違いがあります。
- 給料・・・「毎月1回以上一定の締め日に通貨で全額を支給しなければならない」と法律で定められている
- ボーナス・退職金・・・法律で「支給しなければならない」といった定めはない
たとえば就業規則に「〇月△日まで在籍していないとボーナスの支給はない」や「引き継ぎをせずに退職した場合、退職金はない」と決められていた場合、退職代行で退職すると不支給になる可能性は高いです。
また会社によっては、ボーナスや退職金の制度がないケースもあります。制度がなければ、どんなに「欲しい」といっても支給されません。
反対にボーナスや退職金の制度があって不支給や減額の条件にあてはまらなければ、退職代行で退職してもきちんと支給されます。
デメリット4:公務員だと利用できる退職代行が少ない
公務員の退職を扱っている退職代行は限られています。
というのも公務員は、一般企業の社員と退職に関する法律が異なるからです。
- 一般企業の社員の退職・・・民法
- 公務員・・・民法・国家公務員法・地方公務員法
たとえば民法第627条では「退職の意思を伝えてから、2週間で退職できる」と定められています。しかし公務員には適用されません。依頼者が所属している部署と話し合いながら、退職を進めていくことになります。
交渉が必要なので、民間企業の退職代行では対応できません。さらに対応できるほどの知識や実績、経験を備えた退職代行業者は限られています。
公務員で確実に退職したいなら、法律の専門家である弁護士に相談するようにしましょう。
デメリット5:辞めた職場で悪口を言われる可能性がある
退職代行を利用すると、職場から突然いなくなることになります。あなたにパワハラをしていた上司や先輩からは「逃げた」「根性なし」と言われるでしょう。
また他の人達からも「引き継ぎもしないで辞めるなんて非常識」「挨拶もしないで辞めるなんてありえない」と批難されるかもしれません。そんな悪口を言われるなんて、嫌ですよね。
しかし見方を変えると、悪口を言われているのは辞めた職場内だけです。
辞めた会社に再び出向くことはないですし、元同僚と会うこともほぼないでしょう。つまりどんなに悪口を言われたとしても、辞めたご本人に聞こえてくることはないです。
退職代行を利用すると「元職場で悪口を言われるものだ」とある程度の覚悟が必要になります。しかし悪口を言われたとしても辞めてしまえばご自身には聞こえてこないので、気にする必要ないです。
退職代行の利用で得られる4つのメリット
退職代行には「お金がかかる」「悪口を言われる」などのデメリットがあります。しかしデメリットがあるとしても、利用して得られるメリットのほうが圧倒的に大きいです。
メリット1:退職の意志を自分で伝えなくていい
Aさん
Bさん
退職を伝えるときは「対面で直接」が基本になります。退職を伝えるのは勇気がいりますよね。
退職代行のもっとも大きなメリットは、退職の意志を自分で伝えなくていいことです。会社や怖い上司と直接連絡を取らずに退職の手続きを進められるので、退職でかかる精神的負担が非常に少ないです。
また退職代行は、依頼者と会社の連絡の取り次ぎを行ってくれます。
依頼者が会社に伝えておきたいことは、退職代行を通して会社に伝えれば問題ないです。反対に会社からの連絡事項は、退職代行から伝達されます。
会社側と直接話すとなると、手続き以外の煩わしい会話をしなくてはいけません。一方退職代行に依頼すれば、会社の人達とひとことも話さないで会社を辞められます。
メリット2:依頼した日から会社に行かなくていい
退職代行に依頼すると、依頼した日から会社に行かなくてよくなります。出勤しなくていいのには大きく3つのパターンがあります。
- 退職日まで有給消化
- 退職日まで欠勤扱い
- 即日退職
退職代行が会社の了承を得て辞めるまでの2週間を有給や欠勤扱いにできれば、依頼した日から出勤しなくていい「実質即日退職」ができるでしょう。
また「会社の合意を得られれば、即日退職できる」という法律もあります。退職理由に会社が納得してくれれば、即日退職も可能です。
Cさん
筆者
退職代行まで利用して「辞めたい!」と言っている社員を、無理に引き止めようとする会社はめったにありません。
しかし「本人の意志が確認できないので退職は認めません」と拒否するのが心配であれば、弁護士や労働組合の交渉できる退職代行に依頼しましょう。
メリット3:退職後のサポートも受けられる
退職代行には退職後のサポートに対応している業者もあります。
退職代行の利用の有無にかかわらず、「退職した後のほうが大変」かもしれません。たしかに退職は退職自体も精神的な負担が大きいです。
しかし退職後もさまざまな手続きや転職活動といった、やらなければならないことは多くあります。
しかも手続きや転職活動が初めてなら、独りですべてやるのは不安なはずです。嫌な会社からやっと解放されたのに、また不安やストレスを抱えてしまっては意味がありません。
- 退職届テンプレート完備
- 退職後の2か月無制限フォロー
- 退職の書類受け取りフォロー
- 無料転職サポート
- 給付金サポート
メリット4:法的手続きに対応してくれる業者もある
有給消化や未払残業代の交渉ができない業者もあるで触れましたが、退職代行は運営元のごとに対応できる業務範囲が異なります。
運営元 | 連絡の取り次ぎ | 会社との交渉 | 法的手続きの対応 |
---|---|---|---|
民間企業 | できる | できない | できない |
労働組合 | できる | できる | できない |
弁護士 | できる | できる | できる |
弁護士の退職代行は、退職代行である前に法律のプロです。「依頼者に代わって退職を伝える」だけでなく、以下のようなことに対応してくれます。
- 職場でのハラスメントに対する慰謝料請求
- 未払残業代や給料の請求
- 労災認定手続き
- 損害賠償請求への対応
退職代行を利用すると懲戒解雇や損害賠償請求されるリスクあり
Dさん
Eさん
先に結論をいうと、退職代行を利用したことが理由で「懲戒解雇」や「損害賠償請求」されることはほぼありません。
ただし、以下のような場合は例外です。
- 退職代行を利用する前に無断欠勤を続けていた
- 会社の名誉に関わる犯罪行為をした(殺人・強盗など)
- 会社に経歴詐称をしていた
- 会社のお金を横領した
- 大きなミスで会社に損害を与えてしまった
会社との法的トラブルを抱えている場合は、最初から弁護士か弁護士の退職代行に相談するようにしましょう。
退職代行のデメリットを避けるためのコツは3つ
退職代行にデメリットがあることがわかっていても、できることなら悪い部分は避けていいとこ取りしたいですよね。
退職代行のデメリットを避けるコツは、3つあります。
対応可能な業務の範囲と理想の退職がマッチしているか確認する
退職代行は、運営元別に対応できる業務の範囲が異なります。
運営元 | できること | 料金相場 |
---|---|---|
民間企業 | 会社と依頼者の連絡の取り次ぎ | 1~3万円 |
労働組合 | 会社と依頼者の連絡の取り次ぎ 会社との交渉 |
2.5~3万円 |
弁護士 | 退職代行業務全て | 3~7万円 |
民間企業の退職代行は料金が安いです。しかし「無断欠勤を続けてしまっている」という人が依頼すると、退職が失敗するだけでなくトラブル解決も難しくなってしまうでしょう。
ご自身の理想の退職をイメージし、業務範囲がマッチしている退職代行を選ぶようにしましょう。
弁護士か労働組合の退職代行を選べば間違いない
退職代行を利用して退職をする場合、多くの場面で交渉が必要になります。民間企業の退職代行に依頼してから交渉が必要になると、希望通りの退職が実現できなくなってしまいます。
しかし退職はやり直したり取り消したりすることはできません。
「自分の希望がはっきりしない」とご自身に合った業務範囲の退職代行に迷うなら、弁護士や労働組合で交渉のできる退職代行を選んでおけば間違いないです。
料金と退職代行の料金相場を比較する
退職代行は、運営元別に料金相場があります。依頼する前には料金相場と退職代行業者ごとの料金を比較するようにしましょう。
また退職代行業者の料金システムは、業者ごとに異なります。公式ホームページに大きく表記されている料金が「サービスの全額」になるとは限らないので、注意が必要です。
たとえば「代行料金1万円」と書かれている業者があったとします。1万円であれば、運営元の退職代行業者の料金相場よりも安いです。
しかしあれこれとオプションを追加するうちに、依頼完了後に予想よりも高額を請求されるケースもあります。
ご自身で料金をシミュレーションするのが不安な人は「追加料金一切なし」の退職代行を選んで、料金相場と比較するようにしましょう。
追加料金一切なしならば最初の料金から上乗せはないので、最初に見たままの金額で依頼できます。
「やめとけ」という評判の多い退職代行は避ける
退職代行には、さまざまな口コミが寄せられています。その中でも「やめとけ」「後悔」といった、よくない評判の多い退職代行は避けておくのが無難です。
よくない口コミや評判が書きこまれる理由は、以下のようなものがあります。
- 退職代行のサービスと依頼者の要望がマッチしていなかった
- 退職代行に対する嫌がらせ
- 退職代行の質が悪かった
退職は人生の大きな選択です。多くの人が「やめとけ」と言っている業者に、大きな決断をゆだねるようなリスクを冒す必要はありません。
退職代行のデメリットが気になる人からよくある質問
退職代行のデメリットが気になるという人は、とても真面目で慎重な人が多いです。デメリットの他にも、世間体やトラブルについて知っておきたいというご質問を多くお受けします。
退職代行を利用すると「クズ」と言われないか心配です
「退職代行のデメリット」の中でご紹介した通り、退職代行を利用すると元職場で悪口を言われる可能性があります。もちろん「クズ」と言われることもあるでしょう。
しかし言われているのはしょせん狭い元職場という空間内だけなので、気にする必要はありません。
それにそもそも退職代行の利用を検討するほどに追い詰められたのはなぜでしょう?労働環境や労働条件、人間関係などがよくない会社のせいですよね。
つまり「クズ」なのは退職代行を利用した人ではなく、退職代行での退職者を出した会社側なのです。
退職代行のトラブル事例を教えてください
退職代行でのトラブル事例をいくつか挙げておきましょう。
- 退職完了後に業者と一切連絡が取れなくなった
- 想定していたより高額の料金だった
- 会社から連絡がきた
- 有給消化が認められなかった
- 懲戒解雇された
- 退職後に会社から損害賠償請求された
【まとめ】退職代行にデメリットはある?
退職代行には、5つのデメリットがありました。
退職代行はデメリットよりも、得られるメリットのほうがはるかに大きいです。業者が多くてどこがいいのかわからないときは、弁護士か交渉できる労働組合が運営している退職代行業者を選ぶようにしましょう。