退職代行は退職をご自身で伝えられない人の心強い味方です。頼もしいサービスですが、百発百中トラブルなく退職できるわけではありません。
今回は退職代行で起こりやすいトラブル事例とその回避方法を徹底的に解説します。最後まで読んで、ご自身の希望通りの退職を成功させてください。
- 退職代行で起こりやすいトラブルは10事例もある
- トラブル事例は多いが、退職代行が原因のケースは意外と少ない
- トラブルを回避するためには、退職代行選びが重要!
- 退職代行を選ぶなら、弁護士や交渉できる労働組合の退職代行にしよう
目次
【要注意】退職代行を利用して起こりやすいトラブル事例10選
どのような退職をするかは、人生を左右しかねません。何事もなくスムーズに退職できるのが一番です。
退職代行の利用でトラブルを回避するためには、まずトラブルそのものを知りましょう。
トラブル①退職代行に無断で上司が自宅に押しかけてくる
Aさん
退職代行は会社に退職の連絡をする際に、「依頼者に連絡や訪問をしないように」伝えます。しかし残念ながら、退職代行の「依頼者に接触するな」という警告に法的な効果は一切ありません。
法的効果がなかったとしても、たいていの会社は退職代行と連絡を取り合うことに了承してくれます。ところが一部の強引な会社は、警告を無視して依頼者と連絡を取ろうとしたり自宅に押しかけたりしてくるようです。
会社からの連絡や訪問があった場合は、応答せずに退職代行に連絡しましょう。退職代行が依頼者に代わって対処してくれます。
誤って応答すると出社を強制されたり退職を拒否されたりするなど、トラブルが大きくなるので要注意です。
トラブル②料金を支払ったら退職代行業者との連絡が途絶える
Bさん
料金を支払って連絡がなくなる業者の中には料金だけ取って何もしなかったり、退職できたと嘘をついたりする金銭目的の「退職代行詐欺」のケースもあります。
退職代行業界全体のサービス自体が向上化してきた現在は、質が悪い退職代行業者は減ってきているようです。しかし決してなくなったわけではないので、注意しましょう。
トラブル③退職してから退職書類が送られてこない
Cさん
退職代行の利用の有無にかかわらず退職すると、会社から退職書類が送られます。通常は10日~2週間ほどで届くのですが、まれに送られてこないトラブルがあります。
退職の書類は以下のようなことに必要です。
- 国民健康保険への切り替え手続き
- 国民年金への切り替え手続き
- 失業保険の給付申請手続き
- 転職先への入社時の提出書類
- 転職先の年末調整(転職しない場合は自分で確定申告)
せっかく会社と連絡を取らずに退職できたのに、結局連絡をするはめになっては意味がないですよね。
トラブル④会社に有給消化を認めてもらえなかった
Dさん
しかし会社側が拒否してきた場合に、話し合いができる業者は限られています。
運営元 | 退職の交渉 |
---|---|
弁護士 | 〇 |
労働組合 | △ |
民間企業 | ✕ |
退職の交渉ができない業者に依頼すると、有給消化だけでなく未払残業代や退職日の調整などあらゆる交渉ができません。
トラブル⑤退職金をもらえなかった
Eさん
- 会社に退職金制度がない
- 勤務年数が足りていない
- 退職金に条件がある
会社に退職金支給のルールがなければ、退職金は支払われません。
また退職金をもらえる条件も会社ごとに異なります。たとえば「勤続年数3年以上から退職金を支給する」といったルールを設けている会社は多いです。1か月などの短期間で退職した場合、退職金はもらえません。
さらに「引き継ぎをしないで退職する場合、不支給」と厳しいルールを定めている会社もあるようです。退職代行で即日退職すると引き継ぎはほぼできないので、退職金がもらえないでしょう。
トラブル⑥想定外の費用を請求された
Fさん
たとえばホームページ上に「15,000円」と表示のある業者があったとします。しかし15,000円が「退職を伝えるだけの料金」だと、有給の交渉や即日退職などいろいろオプションを付けるうちに高い料金になってしまいます。
「そんなのは聞いていない」と言ってもお金が戻ってくる可能性は低いので、ご注意ください。
トラブル⑦「退職完了」すると退職代行業者と連絡できない
Gさん
しかし退職は退職した後にも転職活動やさまざまな手続きなど、やらなくてはいけないことがたくさんあります。それらを独りでこなすのは不安ですよね。
近頃は退職した後にも無料で力を貸してくれる業者も増えてきているので、ご安心ください。
トラブル⑧懲戒解雇された
Hさん
なぜなら懲戒解雇は、「社員が会社の秩序を乱すような重大な規律違反をしたときのペナルティ」として行われる解雇だからです。
懲戒解雇になるケースは、以下のようなものがあります。
- 長期間の無断欠勤
- 会社に損害を与える重大な業務命令違反
- 金銭の横領
- 殺人・強盗など会社の名誉を害する犯罪行為
- 会社の採用に影響を与えるほどの重大な経歴詐称
懲戒解雇は退職代行が原因ではありませんが、退職代行が間に入ることでトラブルが大きくなるおそれがあります。
トラブル⑨会社から損害賠償請求される
Iさん
- 会社で重要なプロジェクトやポジションについていた
- 退職したことで大きな取引先がなくなった
- 会社の備品を壊した
- 故意・過失で他の社員に業務に支障が出るケガを負わせた
たとえば社用車を壊したことを隠して退職代行で退職した場合、退職後に事態がバレると車の修理代などの損害賠償を請求される恐れがあります。
トラブル⑩退職自体ができなかった
Jさん
交渉できない業者に依頼してしまうと「退職代行での退職は本人の意思確認ができないので認めない」と会社が退職拒否をしてきたときに、会社を説得できません。
退職代行での退職が失敗し、本人が直接会社と話して退職を認めてもらわなければならなくなります。
退職代行でトラブルが起きてしまうのはなぜ?
退職代行にはさまざまなトラブル事例があり、退職代行を利用するのが不安になったのではないでしょうか?
しかし退職代行の利用が原因でトラブルが起きるケースは意外と少ないです。
理想の退職と依頼した業者のサービス内容が合っていない
退職代行は運営元によって、対応できるサービスの範囲が異なります。
運営元 | 民間企業 | 労働組合 | 弁護士 |
---|---|---|---|
退職や本人の要望を伝える | 〇 | 〇 | 〇 |
退職日の調整 | × | △ | 〇 |
有給など退職の交渉 | × | △ | 〇 |
未払残業代・給与の請求 | × | × | 〇 |
パワハラなどの慰謝料請求 | × | × | 〇 |
法的なトラブルの対応 | × | × | 〇 |
たとえば民間企業の退職代行は交渉ができません。「有給の交渉をして欲しい」と考えている人の場合、民間企業の退職代行が精一杯サービスをしても理想の退職を実現できないでしょう。
依頼者側が理想としている退職と退職代行業者のサービスのミスマッチが起きると、「いい退職できなかった」とトラブルになってしまいます。
会社が退職代行対策をしている
退職代行の認知度は年々高まってきています。その勢いは退職代行対策に乗り出す会社が出ているほどです。
退職代行対策をしている会社は、就業規則で「退職代行の利用を禁止」しています。就業規則で禁止されていると、退職代行を利用できません。
知らずに退職代行が会社に電話をしても、就業規則を理由に退職拒否をされてしまいます。
依頼する前から会社との間にトラブルがある
依頼する前から会社との間にトラブルがある場合、退職代行を利用すると問題が解決するどころかよけいに大きくなります。
たとえば連続無断欠勤は懲戒の対象です。しかし会社の出勤命令に従って上司や会社と話し合うようにすれば、懲戒解雇ではなく普通の退職ができるでしょう。
ところが退職代行が介入すると会社の心象を悪くしてしまい、問答無用で懲戒解雇を言い渡されることになります。
懲戒解雇や損害賠償請求といった法的なトラブルを解決できるのは弁護士だけです。依頼する前から会社とのトラブルを抱えている場合は、弁護士に相談するようにしましょう。
トラブル回避!安全安心の退職代行を選ぶためのコツ5選
退職代行を利用したい人は、退職を自分で伝えられないほどツライ状況の人がほとんどです。ただでさえツライ状況なのに、さらにトラブルに遭うのは避けたいですよね。
就業規則の退職時の決まりごとを確認する
就業規則を読んで退職についてチェックしておきましょう。トラブル事例では退職金がもらえないトラブルをご紹介しました。退職金制度がない会社で退職金はもらえません。
反対に退職金制度のある会社なら、退職代行を利用しても退職金がもらえます。就業規則で退職の決まりごとを知っておかないと、もらえるはずの退職金やボーナスを損するかもしれません。
また「退職代行対策」がないかも重要です。退職代行対策されている会社で利用できる退職代行は、弁護士の退職代行しかありません。
就業規則を確認すれば、ご自身が依頼すべき運営元の退職代行が見えてくるはずです。
自分が退職代行にして欲しいことを洗い出す
ご自身が退職代行にして欲しいことは何なのか明確にしましょう。繰り返しになりますが、退職代行には3つの運営元があります。
- 民間企業・・・退職の意思を伝達して欲しい人
- 労働組合・・・有給消化や未払残業代など、退職の交渉がしたい人
- 弁護士・・・会社への慰謝料請求など、法的手続きに対応して欲しい人
- 退職届のテンプレート配布
- 無料転職支援
- 給付金サポート
- 引っ越しサポート
- 心療内科紹介
ご自身が退職代行に頼りたいことにマッチしたサービスのある退職代行を選べば、退職代行のトラブルは少なくなるはずです。
会社との間にすでにトラブルがあるなら弁護士がベスト
会社との間のトラブルは、退職代行では解決できません。というのも会社との重要なトラブルの解決には法律が絡む場合が多いからです。
- 弁護士以外の退職代行・・・依頼者の退職の代行者。会社との間のトラブル解決は業務範囲外
- 弁護士・・・依頼者の代理人となって退職を含む法律行為を行う
退職代行に支払える予算の範囲を考える
退職代行の利用には数万円の料金がかかります。おおよその料金相場は2~3万円です。
- 民間企業:1~3万円
- 労働組合:2.5~3万円
- 弁護士:3~7万円
サービスと金額の両方に納得できる業者なら、信頼して依頼できるでしょう。
「この退職代行はやめておけ」という評判の多い業者は避ける
退職代行には、さまざまな評判が寄せられています。評判には個人の感じ方や受け取り方も反映されているので、すべてを真に受けるわけにはいかないでしょう。
しかし「悪い評判=トラブルの種」です。多くの人が「この退職代行はやめたほうがいい!」と言っている業者に依頼すると、ご自身がトラブルに巻き込まれるかもしれません。
触らぬ神に祟りなしというとおり、どんなにサービスが魅力的でもトラブルになるリスクのある退職代行業者は避けておくのが無難です。
勇気を出して上司に「やめたい」と伝えてみる
退職代行のトラブルを避けるなら、一度は勇気を出して自分で退職の意思を申し出てみるのもアリです。
いつもは「怖い」と思っている上司でも、真剣に話を聞いて退職を承諾してくれるかもしれません。退職が認められたら、退職代行を利用する必要がなくなりますよね。
反対に退職を認められなかったとしても、あなたは退職の意思を自分で伝えるという退職のスジを通したので「退職代行を使う正当な理由ができた」と思っていいでしょう。
「会社に行けないぐらいツライ」という人にまで強要しませんが、少しだけ勇気を出して「やめたい」と伝えてみましょう。
【まとめ】退職代行のトラブルが気になる人へ!
退職代行にはさまざまなトラブルがありますが、「退職代行が原因」で起きているトラブルは意外と少ないことがわかりました。
退職代行のトラブルは上手に退職代行を選べば、回避可能です。